FUJIMARUワインコラム -ちょっと掘り下げたワインのお話-

島之内フジマル醸造所 醸造長田中のイタリア自然ワイナリー訪問記はここをクリック!

こんにちは!

島之内フジマル醸造所の田中です。

先日、輸入元であるテラヴェール様のご厚意で、イタリア トスカーナの新進気鋭の自然派ワイナリー「Ampereia」の収穫祭へ参加させてもらうことができました。


栽培醸造責任者のマルコ タイ氏、輸出・渉外担当のフランチェスコ パスクッチ氏と共にロッカテデリギの町や畑・ワイナリーを見て回りながらAmpereiaの歴史と展望を取材してきましたので、弊社取扱いワインのご案内と共にリポートさせていただきます。


  ■「Roccatederighi」という土地

アンペレイアが醸造所を構えるロッカテデリギはグロセットの街を見下ろす山稜にあり、空気が澄んでいる時には地中海に浮かぶコルシカ島まで見通すことができるそうです。周りの環境は、もともとほとんど農地として開墾されていなかったため、人の手が加わらないまま土地が本来持つ個性、生物多様性が保たれています。実際、アンぺレイアの後に尋ねたモンタルチーノやキャンティなどの整然と整えられたエリアよりも植生や昆虫が豊富に見えました。また、ワイナリーの花壇ではミツバチたちが元気よく蜜を集めて飛び回っているのも印象的でした。



    

土地としての特徴は火成岩と石灰岩、砂が混じった粘土質土壌と地中海性・大陸性気候によってつくられていて、標高や海からの位置によってその割合が違います。
基本的に標高が高いほど火山由来の成分が多い石灰石や火成岩が増えて大陸性気候が強くなり、低くなると海洋性の石灰石と砂の割合が増えて地中海性気候が強くなる傾向で、この土壌のグラデーションが区画ごとのミクロクリマを作り、アンペレイアのキュベに個性を与えています。


実際に私が土を触ってみた感じだと、岩石や粘土は石灰だけでなく鉄を含み、硫黄成分を含んだ石も散見されました。
アッサンブラージュ前の2023VTをタンクごとにテイスティングしたとき、確かに区画ごとの個性がワインの味わいにはっきりと現れていると感じました。  

■栽培醸造家マルコ・タイ氏
ワインつくりのすべてを統括するマルコ・タイ氏は、緻密で理論的な考え方をもち、丁寧で実践的なブドウ栽培と繊細な醸造を行っていました。
とても真摯で理知的なマルコは一つ一つの質問に丁寧にわかりやすく答えてくれて、その人柄は、彼のワインにしっかりと反映していると思います。
私の英語かイタリア語がもっと流暢だったら、もっといろいろ語り合えたのかなと、終始質問だけに終わってしまったことが悔やまれましたが、それはまた次回の楽しみとしてとっておきたいと思います。

   


アンぺレイアの栽培と醸造

アンぺレイアの畑は標高とミクロクリマによって大きく4つに分かれています。

La Rocca (実際に歩いて回った区画)

海抜450600m、片岩・石灰石・粘土が混じる土壌で、1日の寒暖差が大きい大陸性よりの気候。カベルネ フラン、混植の白品種、メルローを栽培。私が実際に歩き回ったのはこの区画で、トスカーナの他のエリアと比べると、昼の気温は変わらないのですが夜の冷え込みはかなり大きかったです。この寒暖差は収穫期にはとても重要で、アンぺレイアのカベルネフランに青さが全くないのは、このおかげではないかと思います。また、標高が高くなるほどワインに硫黄を感じ、固く還元的な表情を見せていました。

Sassoforte
海抜300m、火成岩と粘土が多い土壌の南東向きエリアで地中海よりの気候。カリニャン、アリカンテ・ネロ、白品種を栽培。


Pieve
海抜300m、小石と砂が混じった比較的肥沃な粘土質土壌で、風通しのいい開けた丘で温暖な気候。アリカンテ・ネロを中心にムールヴェードルやカリニャーノを栽培。



Cannucetto
海抜200m、堆積岩や海洋化石を含んだ土壌で海の影響の大きいミクロクリマ。サンジョヴェーゼ、アリカンテ・ネロ、アリカンテ・ブーシェ、ムールヴェードルを栽培。
Unlitro』の区画。アンぺレイアは生物多様性を崩さないように気を付けながら、新たなブドウ畑を開墾し、井戸を掘り、ヴィンテージやミクロクリマにあわせて調合剤を変えながらカレンダーに従ってバイオダイナミック農法を実践していました。
ブドウだけでなく、オリーヴや古代小麦を育てて牛を放牧し、養蜂を行いながら自然に寄り添った農業を営んでいます。

カベルネフランが彼らのフラグシップ品種ですが、ワイナリーでテイスティングしたアリカンテ・ネロ単一のワインがとても素晴らしかったことを伝えると、SassofortePieve区画のミクロクリマはアリカンテ・ネロに適していて、彼らも力を入れて育てていると説明してくれました。


収穫は例年9月中旬〜10月初旬。


発酵は主にセメントタンクですが、一部ステンレスタンクを使うこともあるそうです。基本的には昔ながらのフィールドブレンドを良しとしていますが、『Unlitro』はアッサンブラージュで作っています。

カベルネフランやアリカンテ・ネロは区画ごとにマセレーション期間を調整し、あまり全房発酵はせずピュアな果実味を活かすつくり方です。熟成は大樽とセメントタンクを使いますが、ワイナリーには300Lくらいのアンフォラもいくつかおいてありました。
赤ワインは~12ヶ月程度の瓶内熟成を経てリリースするようです。  


フラグシップ品種としてのカベルネフラン
アンぺレイアをこの土地に構えた大きな理由の一つであるカベルネフラン。この土地に根付いていた樹齢60年を超えるカベルネフランのすばらしさに惚れ込み、フラグシップ品種として力を注いでいます。

フランチェスコは、火山由来の土壌と標高、豊富な日射量、絶えず流れる風がアンぺレイアのカベルネフランの個性を形作り、際立たせていると説明してくれました。

その特徴が特にくっきりと感じ取れるのが、『カベルネフラン』という単一区画のキュベ。テイスティングしたどのヴィンテージも、石灰質土壌に由来するじわりと効いた塩味と、陽を十分に浴びしっかりと根を伸ばしているのが良くわかるパワフルな生命力を感じました。

その力強さは、重いのではなく溌溂とした印象で、タンニンは強めですが緻密で滑らか。マルコが優しさと繊細さを引き出すような細やかな醸造を心がけていることがよくわかります。

数ヴィンテージの『カベルネフラン』と『アンぺレイア』をテイスティングさせてもらいましたが、個人的にはその力強さゆえに新しいVTはまだ硬さがあり、瓶熟成によって酸とタンニンが落ち着くことでより一層素晴らしい味わいにまとまっていくのではないかと思いました。

マルコは、偉大なワインではなく「体に染み込むような滑らかで楽に飲めるけど、味わいは奥深い」ワインを目指していると話してくれましたが、VTにもよりますが、数年の瓶熟を経たくらいでマルコの狙った通りの味わいが楽しめるのではないかなという印象です。

とにかくワインメーカーとして実りの多いアンぺレイア訪問で、彼らの農業やワイン作りに対する情熱は心に響いたし、フィロソフィーが栽培・醸造、マーケティングや生活に至るまで、既にしっかりまとまっていながらも、まだまだこれからだ!という未来への展望や理想が溢れていました。こういう作り手のワインは飲み続けたいと心から思います。加えて、こういうメリハリの効いた特徴ある土地を丸ごと使って表現できるワイン作りは本当に楽しいだろうな、と羨ましくもありました。

内フジマル醸造所 田中敦志

アンペレイアのワインはこちらから↓

〇アンペレイア/ビアンコ ディ アンペレイア 2019年 (白)3,570円(税込)
〇アンペレイア/ロザート ディ アンペレイア 2020年 (ロゼ)3,170円(税込)
●アンペレイア/ウンリトロ 2021年 (赤)2,880円(税込)
●アンペレイア/ケポス 2021年 (赤)3,570円(税込)
●アンペレイア/カベルネフラン 2020年 (赤)4,160円(税込)
●アンペレイア/アンペレイア 2018年 (赤)5,350(税込)

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日本のワイン

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